機動戦士ガンダムTheOrigin
機動戦士ガンダムTHE ORIGIN 16 オデッサ編 後 (角川コミックス・エース 80-19)
- 作者: 安彦良和,矢立肇,富野由悠季
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2007/11/26
- メディア: コミック
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ガノタのガノタによるガノタの為のガンダム*1、機動戦士ガンダムである。ガンダムが好きな人も、そうじゃない人も見て損は絶対しないだろう。
お話
未来、暦は西暦から宇宙世紀に移り、人もまた宇宙へと飛び立った時代。宇宙に殖民した人々と地球に残った人々、やがてそこには富の差が生まれ、袂を別っていく。その薄氷の上になりたった平和は、一人の野心によって打ち砕かれる。
ジオン公国の首魁、ギレン・ザビの独立宣言と宣戦布告は火種となって、宇宙に満たされた火薬を爆発させた。戦いは戦いを生み、宇宙は戦争という波に飲まれた。
サイド7と呼ばれる宇宙植民地に住む少年、アムロもまた波に飲み込まれる一人にしか過ぎない。彼がニュータイプと呼ばれる、一種の超人であっても。彼が操る人型ロボット、モビルスーツ「ガンダム」が如何に優れた兵器であろうとも。彼は戦争で何を失い、何を得るのだろうか。
魅力
ガンダムの魅力というのは複雑で語りにくいものがある。少年の成長譚でありながら、国の興亡史でもあり、宇宙世紀という世界を語るものでもあるからだ。「ニュータイプ」「モビルスーツ」「ミノフスキー粒子」様々なガジェットの魅力もあるし、戦争物語としての魅力もあるし、それぞれのキャラクターも魅力的である。
そしてそれらが、ある種の自然主義的な理想によって描かれていることこそが魅力なのではなかろうか。
アムロがどんなに力強く成長しようとも、彼は世界を動かしうる存在にはなれない。なぜなら彼はただの一兵士に過ぎないからだ。彼はどうあがいても英雄ではないのだ。*2
だが一つの国の歴史に参加する一人であり、アムロもまた確実に世界に影響を及ぼす一人ではある。彼もまた世界の構成物の一人だからだ。その人間の無価値、あるいは価値を真正面から描いている。幻想の中に自然主義的価値観が持ち込まれている魅力は、なんとも表現しがたいものだ。
そしてまた、安彦良和の描くガンダムもその魅力に溢れている。それぞれの人間がそれぞれの人間として振る舞い、生きて死ぬ。我々現実の世界ではとても当り前のことを、当たり前に描ける素晴らしさがある。アニメーションであるという制約からか、アニメ版のガンダムがアムロの成長譚に傾いた一方、マンガ版のガンダムは群像劇の色合いを深めている。その後の富野由悠季が行った道を考えれば、むしろこちらのガンダムの方が描きたかったことなのではなかろうか。*3まさにTheOriginの名に相応しい作品である。
おまけ
広告にガンダムさんがあったけど、作者の名前が大和田だった。「LyricalTokarevKillThemAll」の人だろうか。ちょっと買うかな。