鬼切り夜鳥子

鬼切り夜鳥子3 みちのく血煙慕情 (ファミ通文庫)

鬼切り夜鳥子3 みちのく血煙慕情 (ファミ通文庫)

鬼切り夜鳥子"みちのく血煙慕情"
 鬼切り夜鳥子シリーズ第三巻、ちょっと切ない血煙ラブストーリー。あとがきによると、しばらく続きを書く気はないようです。ここで終了したらマジファック。
 

お話

 鞍馬山から鬼退治の命を受けた求道坊と、源氏に追われる女陰陽師の夜鳥子が出会う。二人は意気投合し、鬼を退治しながら陸奥を旅する。道中、様々な人々と袖を触れ合わせながら、二人の旅はどんな終わりを見るのか。

魅力

 星やハートマークは勘弁してくれ。二巻は色々と萎えました。今回はかなり控えめだったので、すっかりと本に没頭できたけどね。それにしてもサブタイトルのセンスの秀逸さには参るな。”みちのく ちけむり ぼじょう”なんてどこから出てくるのやら。
 それはともかく、この物語の魅力は、求道と夜鳥子の間にながれる暖かい情だ。読んでいると腹の中がゆっくりと温まっていく心持がする。それが堪らなく心地よく、そして少し物悲しい。
 物悲しいのは終わりを知っているからか。夜鳥子の終わりは、一巻ではっきりと述べられている。それが将来への予期となってモラトリアムの物語になっていた。そしてまた、それでも希望を抱かずにいられない、序中盤の暖かさ。
 けれど物語の最後、なぜか悲しさを感じなかった。たぶん求道と夜鳥子の暖かさが深くて、余りにも前向きで力強く、それが悲しみを抱くことではないように思えた。夫婦の絆を描いたウェルメイドな物語だった。