鬼切り夜鳥子
- 作者: 桝田省治,佐島真実
- 出版社/メーカー: エンターブレイン
- 発売日: 2007/06/30
- メディア: 文庫
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鬼切り夜鳥子シリーズ第三巻、ちょっと切ない血煙ラブストーリー。あとがきによると、しばらく続きを書く気はないようです。ここで終了したらマジファック。
お話
鞍馬山から鬼退治の命を受けた求道坊と、源氏に追われる女陰陽師の夜鳥子が出会う。二人は意気投合し、鬼を退治しながら陸奥を旅する。道中、様々な人々と袖を触れ合わせながら、二人の旅はどんな終わりを見るのか。
魅力
星やハートマークは勘弁してくれ。二巻は色々と萎えました。今回はかなり控えめだったので、すっかりと本に没頭できたけどね。それにしてもサブタイトルのセンスの秀逸さには参るな。”みちのく ちけむり ぼじょう”なんてどこから出てくるのやら。
それはともかく、この物語の魅力は、求道と夜鳥子の間にながれる暖かい情だ。読んでいると腹の中がゆっくりと温まっていく心持がする。それが堪らなく心地よく、そして少し物悲しい。
物悲しいのは終わりを知っているからか。夜鳥子の終わりは、一巻ではっきりと述べられている。それが将来への予期となってモラトリアムの物語になっていた。そしてまた、それでも希望を抱かずにいられない、序中盤の暖かさ。
けれど物語の最後、なぜか悲しさを感じなかった。たぶん求道と夜鳥子の暖かさが深くて、余りにも前向きで力強く、それが悲しみを抱くことではないように思えた。夫婦の絆を描いたウェルメイドな物語だった。