俺たちに翼はない

 やってること前提。なんつーか、考え方の筋。テーマとか構造とか、そういうんで行くとあまり面白いゲームじゃなかったんで、筋が悪いのかも。作品が悪いかは保留するけど、なんかフックがなかったんでたぶんこれ以上は俺の頭からはでてこないと思う。ので、書いて終わりにする予定。
 全部で四ルート。タカシ―渡会、シュウスケ―ひよこ、隼人―鳴、統合人格―妹。*1
 前三ルートをクリア後に「俺たちにも翼があったかもしれない」話として、統合人格の話がでてくる。
 すべてのルートでコメディとして一級のシナリオとテキストだった。ひたすら笑える。んじゃ、物語としてどうなのよ、というともにょる。
 前三ルートは、それぞれの人格が居場所をみつけることでアイデンティティを発見する話になっている。空間に対するアイデンティファイというのは結構おもしろい。*2
 当然、統合後の人格の話では、それぞれがアイデンティファイした空間が重なっていく話を期待するわけだけれど、そうはならなかった。それが残念。だいたいのプレイヤーは妹とくっつこうがくっつかまいが、どうでも良いわけで。
 んで、これ二ルートくらい削られてねーかなとか思う。ヨージー妹、カルラ―カケル的なのがあったんじゃねーかと。んで、最後に統合人格の話だったとしたら結構スッキリする。
 既存の純愛系(?)エロゲは、困ってる女の子を助けることでくっつくって話になっている。そのフォーマットに乗っからないほうがよかったんじゃないかなー、とか。
 つーのも、ドラマの軸が主人公側にあるんだよ、この話。女の子のそれぞれの物語が、主人公に比べて軽いじゃん。
 システムと同期した構造を持ち込んだ物語なんだけれど、全体では発散してしまっている。各人格のドラマは、それぞれで消化してくれて構わないのだけれど、じゃあプレイヤーは知っている、すべての人格についての話ではどうなるか、って問題。ここで基軸が「主人公の話」に移るのが自然に思えるんだよね。けどそうはならない。それでカタルシスが得がたくなってんのかなー。ラストは「翼があったかもしれない話」なんだけど、ほんとに「あったかもね」で終わっちゃうのは如何なもんかと。
 んで、結局「翼」ってなんのメタファーなんだろうか。最後の一枚絵、女の子に羽はえてるし。女の子が羽なのです、とか、女怖いとかじゃ寒いし。
 飛べない鳥たちってメタファーだとすると意味わかんなくなっちゃうし。
 空から空へ、つまり朝、昼、夜を見れない、って意味なんかなー。そうすると、朝、昼、夜を渡る鳥として統合された人格って感じになるか。

追記

 巣立たない物語、ってことかも。飛べないのではなく、飛ばない鳥になる物語というか。そうすっとタカシ編が微妙。

*1:ちなみにシュウスケルートはやってない。友達から内容だけ聞いた

*2:つーか、人間自体が空間に対してアイデンティファイすると思う