ヲタカルの狭さと広さ

らき☆すた』が初心者には高度すぎる理由。 - Something Orange
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20080525/p1

らき☆すた』は過去十数年のキャラクタ文化の蓄積の上に成り立っている作品なのだから、その歴史を知らないひとが理解できないのは自然なことかと。

 ヲタクたちは一種のコードで会話をしている。例えば「萌え」であるとか「ツンデレ」であるとか。
“code”の検索結果(1389 件):英辞郎 on the Web:スペースアルク より
http://eow.alc.co.jp/code/UTF-8/?ref=sa

code
【名】
《法律》法体系{ほう たいけい}、法典{ほうてん}
・The Code of Canon Law was revised in 1983. : 教会法典は1983年に改定された。
《法律》〔地方自治体{ちほう じちたい}の〕条例{じょうれい}、規約{きやく}
・According to city traffic code, traffic should slow down to allow emergency to pass. : 市の交通条例によれば、緊急車両が通過できるように車両は徐行しなければならない。
作法{さほう}、行動{こうどう}規範{きはん}[規約{きやく}]
記号{きごう}、符号{ふごう}、コード
・A Canadian postal code consists of six characters. : カナダの郵便番号は6文字で構成される。
《コ》コード、符号{ふごう}
《生物》遺伝{いでん}情報{じょうほう}[暗号{あんごう}]

 このコードによる会話が成り立つには、デコーダとエンコーダがお互いに必要になる。つまり「ツンデレ」と言われたら「金髪ツインテールで『別にあんたのために(ry』*1」とか「ああ、釘宮ね」みたいにデコードしたり、そういった一連のキャラクターをさして「ツンデレ」と言ったり。*2
 文化というのは往々にして、このコードを洗練させることでもあるんだけれど、デコーダを持たない人には理解不能な世界になってしまう。宗教も同じ。「父と子と聖霊」の三位一体説*3なんかは起源を含めて理解しないと外部からは意味不明になってしまう。
 こういったデコード方法を記述した大系を纏めて『学問』と呼んだりすることもあるわけだけど、あいにくヲタカルにはそれがない。教科書読むより論文読めみたいな話になる。
 ここでヲタが悩ましいのは「相手はデコーダを求めている」のに「デコーダを与えるにはコード漬けにする必要がある」ところ。ヲタってのはそうやって成立するものだから。
 しかも現代のヲタカルは、デコーダなしには殆ど読み解けない。そして現在進行形のヲタカルに追いつかんとするなら、古典から始めるのはちょっと難しい。
 コードが高度になりすぎた。さらに性質の悪いことにデコーダの性能がヲタ度を左右する。加えて高度なデコーダを持つ人たちがエンコードする世界だ。
 ヲタカルはコードという狭さを持つ一方、広さも持っている。
 ヲタカルには大量のコードがある。例えば『天元突破グレンラガン』には過去の諸作品のコードが大量に埋まっている。*4ここで疑問なのは、その全てのコードを一人の視聴者が読み解けるか? という疑問だ。限りなく少数の人だけが読み解けるのかもしれない。*5
 つまりコードの開発が進みすぎた結果、ヲタクという族は解体を余儀なくされたのが現状ではないだろうか。だれもヲタカルデコーダをもてなくなってしまったのではないだろうか。
 ヲタクの国にもはや王様はおらず、麻のごとく乱れた国土は諸侯が治めている。諸侯は近隣を開拓し、ヲタクの国は拡大を続ける。だが王座は空っぽのまま。そんな世界になってしまったのではないだろうか。
 ヲタクの国は広く、また広がり続ける。そしてまた分裂していくのだろう。その広さゆえに、もはや彼らを統合する言語はない。

*1:この(ryというのも略の略であることにデコードできないとあかんわけですね

*2:ここで誤解が起きるんだけど、人間ならその程度の曖昧さは大丈夫

*3:「神様だけが偉いのに、なんでキリスト様も偉いのよ。天使はどうなるのよ」「それはね、全部表れ方が違うだけで根っこは皆同じなんだよ」みたいな話だったと思う

*4:ジョー、ヤマト、ガンダム、ゲッター、etc..

*5:コード読解への熱意がなくなったことをさして、おたくいずでっどなのかしら、等と思う