SHI-NO
SHINO ―シノ― 黒き魂の少女 (富士見ミステリー文庫)
- 作者: 上月雨音,東条さかな
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2006/02/10
- メディア: 文庫
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お話
貧乏大学生の『僕』が住むボロアパートに、毎日通う小学五年生の女の子、支倉志乃。黒い髪に白い肌と大きな瞳を持つ彼女は、大人しく口数の少ない、外見も性格もお人形のような少女だ。だが、彼女には変な癖がある。
『DeadEndComplex』。先輩である鴻池に頼まれて『僕』が調べ始めた自殺サークルのサイトに、志乃は惹かれる。人の死に対する強い興味。彼女が持つ黒き魂は、死に関わることを欲望する。
『僕』は志乃に振り回されながら、愚直に少女と向き合う。
魅力
ライトノベルは人間を書かない。人間の捨象、抽出、抽象、記号、それらを書く為に、人間らしいキャラクターがそこには現れる。正確性は欠くが、もし理屈で言うなら「人間を書かなくても、読者が人間を見出せるキャラを書けばよい」とでもなるだろうか。
では、SHI-NOに書かれた人間の捨象とはなんだろうか。死への感受性だ。志乃の志向は死を感受することだが、人は死を体験することはできない。その矛盾からの開放を、『僕』が引き受け、引き止める。それが二人のパートナーとしての存在感を裏付けている。『キミとボク』の関係に深い説得力を持たせた作品だ。
物語とキャラクターの関係性を貫く『死』という背骨が作品に陰影を与え、立体感が見えてくる。実に面白い作品だった。
その他
イラストがよかった。僕は絵の良し悪しが分からないので、イラストにどうのと思うことはあまりないのだけど、このイラストレーターに好感を覚えた。結構適当に描かれることが多い挿絵だけど、キャラクターに対する愛情を感じた。文章で表現される志乃に忠実で、内面も含めた外見をしっかりと描こうとしているんだなと伝わってきた。
総合的に
うん面白かった。当たりだなー。文章力も確実に標準以上。西尾っぽい文章になるところがあって、好みが分かれそうともいえるけど、それ以外はくどさのない文章を書くので、気にせず読めると思う。読んでいない人は是非読んで欲しい。