皇国の守護者

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

皇国の守護者 5 (5) (ヤングジャンプ・コミックス・ウルトラ)

皇国の守護者 原作:佐藤大輔 作画:伊藤悠

完結したわけだが

 マンガ版皇国の守護者が5巻目にて完結! 泣きそう。なんで終わるのか、今の僕には理解できない。というか、どう考えても内紛以外に理由はないと思うので知りたくもない。

けどやっぱり読んだ方がいいって

 骨太のファンタジー&戦記物の作品なのだけど、なにが素晴らしいって、やはり主人公の描写だろう。主人公である新城直衛は物凄い捻くれていて、複雑な人間であり、その味が明確に伝わってくる。矜持を持ちながら自己嫌悪を繰り返し、軍人である事を好みながら軍人である事を嫌い、惰弱でありながら豪胆である。
 そして何より頭脳が明晰であり、常にマクロな視点を忘れない。だが心の中は、小心者であるが故、ミクロな関係にとても大きな価値を置いている。にも関わらず、彼の優秀な頭脳と職責は、彼に感情のまま動くことを許さない。いや他人の感情も、自身の感情も利用することを迫る。
 小を切って大をとらざるを得ない環境においては、彼は確実に小を切る。それがただの冷徹さなら、この作品の面白さなど微塵もないだろう。小を切ることは確実に正しいことだと知りながら、彼は強烈な苦痛を覚える。そして苦痛を覚えることすらも偽善だと知り、自己嫌悪する。自己嫌悪をする自身が、他者の価値を貶めることを知っており、それすらも自身の罪過として背負い前進し続ける。そこには慈悲も許容も無い。
 彼の行く道はどこに向かうのか、連載再開を祈るばかりである。