ようは仙骨ないんでしょ?
昨日、いずみの(id:izumino)さんが泊まりに来たので一晩中センス競争をしていた。
道中にて
夕方の七時ごろ、いずみのさんから連絡をうける。疲れているのでゆっくりしたい、泊めてくれとのことだった。わりといつものことなので、ゆっくりしてってね、と返す。
夜の12時ごろ、いずみのさんが最寄駅についたので迎えにいく。大掃除の締めである本棚の整理はいっとき中断。
寒空のした自転車をこぎこぎ迎えにいくと、コミケ帰りのいずみのさんが立っていた。手に紙袋をさげている。絵が描かれていて、アニメ調の目の大きな女の子が扇情的なポーズをとっている。
「痛々しいのを持っていますね」
ぼくは言った。
「買うと勝手についてくるんです」
いずみのさんが答えた。
「しかし君は、マンガもそうだけど表面しかみれないね。この中にはベビプリのカレンダーが入っているんです」
「けっきょく角川に釣られているだけじゃないですが」
いずみのさんとぼくは歩き出した。
家へむかう途中コンビニに入ると、蛍光灯に照らされた紙袋が光を反射していた。ピンク色と白というレジ前に並べられたプリキュアのグッズにもまけない配色のそれが目立つ。いずみのさんが無言でぼくに紙袋をあずけた。ぼくはなんで地元でこんな羞恥プレイをうけなければいけないのだろうと考えながらいずみのさんの買い物が終わるのをまった。
家にて
「まだ布団しけないんで適当にまっていてください」
返事代わりにいずみのさんがベッドにダイブした。ぼくは床に散らばった本を眺め、げんなりした気分で掃除を再開した。いずみのさんはアフタヌーンを読み始めた。
しばらくして布団をとりにこいと親に言われたので、とりにいこうとすると呼び止められた。
「お風呂に入りたいです」
「親があがってからなら構わないんで、もうちょっと待ってください」
ぼくの分と、いずみのさんの分、布団をせおい部屋に戻ると、葉巻をふかして月マガを読んでいた。ぼくは掃除を続けた。
「しかし僕はsさんに対してだとなんで遠慮がないんでしょうね」
「さぁ、実害がなきゃなにをされてもあまり気にしないからじゃないですか?」
そんな会話をだらだらしながら本を整理していると『天顕祭』があった。
「今年ので一番よかったですよ」
月マガを読んでいるいずみのさんに渡した。ぱらぱらっとめくって閉じた。
「頭を使う作品は読みたくないです」
「超、感覚系ですって」
「感覚ってのは頭を使うものです」
いずみのさんがぼくの勧める作品を読んだためしはないので諦める。ぼくは掃除を続けた。
今度は処女だどうだと騒がしかったので買った『かんなぎ』が出てくる。
「つまらなかったので、あげます」
渡すと読み始めた。
「木像のスケール大きいですよね。このサイズの木像をひとりで黙々つくる主人公は頭がおかしいと思います」
「面白いと言って渡した天顕祭よりも、つまらないと渡したかんなぎの方が読む時間が長くてコメントも添えられることに納得がいきません」
「まぁsさんだし」
ぼくは掃除を続けた。
続けながら『天顕祭』が読まれないことに納得いかないぼくは言った。
「マンガを読むセンスは叶いませんけど、マンガの趣味はぼくの方が上ですよね」
いずみのさんがそれに反論してきたので、センス競争が始まった。
いずみのさんの趣味が上である根拠は以下らしい。
曰く「ベピプリも読まずにセンスを云々するのは片腹痛い」
曰く「sさんにはようは勇気がない」
曰く「ベピプリ同人誌を作るので、読んでテキストをだせ」
曰く「僕はsさんに圧倒的に一人勝ちしている」
曰く「礼・知は儒家思想で、sさんは所詮そこが限界だよね」
曰く「道家思想は儒家思想に戦わずとも圧勝している」
曰く「ようは仙骨ないんでしょ?」
つまるところ仙骨がないと仙人になれないのでぼくは負けるらしい。
センス競争が終わると、いずみのさんが風呂に入りにいっていった。布団を敷こうとするといずみのさんの服がベッドの上に散らばっている。
コミケ汁を吸ったいずみのさんの服をたたみながらぼくは誓った。
2010年のテーマは四海鏡さんにいずみのさんのPOSTをいかにふぁぼらせないかである、と。
その後
風呂から上がってきたいずみのさんが、狂牛病にかかった牛のような足取りで布団に転がった。そろそろ寝ますか、と声をかけるとコミケの紙袋をあさり、G'sマガジンを読み出した。
ようは仙骨がないぼくは寝た。
ディバイデッド・フロント〈1〉隔離戦区の空の下 (角川スニーカー文庫)
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