五感

 麺類を食べるとき、すすって音を出す。小気味良い音を出せると、食事もいっそう美味しくなる。
 本質的ではないのだけど、副次的に本質をよりよくする効果って色々あるな、と思う。
 食事で言えば、他に割り箸を割る音や漬物なんかのこりこりと口の中で砕ける音、気分を盛り上げてくれる効果ってのは色々ある。
 本も同じで、デジタルコミックなんかは味気ない。ページをめくる音や指先にある紙の質感、インクの匂い。無意識にしか感じないけど、それらがあるとないとでは気分も随分変わる。古本屋の匂いも買い物の気分を盛り上げてくれる。
 そういえば一度トラの穴に行ったとき、汗くさいようなイカくさいような臭いに辟易して数秒で退散した記憶があるけれど、なじみのある人からみればそれもまたよしなのかもしれない。
 五感の一つだけから読み取っているように考えがちだけれど、案外五感の色々で物事を読み取っているのかな。