愛しているに潜む嘘

 愛しているという言葉には、絶対に嘘が潜む。人間は五感で物事を把握する。すると、自身の感覚が捉えた物事、意識に対してしか判断をできない。判断、つまり好きの嫌いの愛している憎んでいる、そういった言葉は自分の意識上にある相手や本に対してしかいえないのだ。そんな無礼はあるかと思うのだが、人間がそうなっているのは仕様のないことなのだ。人間は生まれた時から孤独なのである。
 その嘘と無礼を使わなければ人が世を渡るのは難しいだろう。だから誠実にあり続ければ破綻しかない、よって楽する為に、好きの嫌いの愛している憎んでいるということに、問題はない。だがそれに羞恥を抱かずにはいられないのだ。耐えられないのだ。
 愛しているという言葉に潜む嘘から逃避するのは、我慢ならないのだ。