神様ドォルズ

 ナス作品からエグミやしつこさを抜いて、エレガントに仕立てた味わい。面白い、と素朴に頷ける作品だ。

神様ドォルズ 1 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ 1 (サンデーGXコミックス)

神様ドォルズ やまむらはじめ

お話

 大学への進学を機に田舎から出てきた主人公は恋をしていた。告白しようと意気込んできた飲み会、機会を逸して告白できず仕舞いになるが、良い雰囲気のなか二人でエレベーターに乗ろうとしたとき、二人の目に飛び込んできたのは血みどろの死体だった。主人公は思う”都会でもよくある話なんだな”。
 過去に背を向け、村の因習から逃げるようにして彼は旅立ったはずだった。だがそんな彼を二人の幼馴染が追いかけてくる。一人は殺人の罪悪感を知らない少年、一人は主人公をお兄ちゃんと慕う少女だ。二人は彼が逃げてきた過去と因習を連れてきた。村の神様”案山子”、二人はその使い手”隻”である。物語は伏線を貼りながら動き始める。

魅力

 違和感がある。マンガやライトノベル、あるいは文学*1を読んでいると、ある種のパターンから読み方を覚えていく。この作品は、それに習っているようでありながら、習っていないのだ。どこからそんな感触がするのだろうか?
 物語を読み方の一つとして、伏線を発見することが挙げられる。無意識の内にこれはそうだ、これはそうかもしれないと思いながら、自身でも気づかないような形で記憶していくものだと思う。この作品においては、それら伏線の張り方は丁寧な方だ。
 にも関わらず、伏線の消化という形ではなく物語が現れたりする。これは非常に奇異なもので、元来なら作品の質を貶めるものだ。にも関わらず、この作品ではそれが全く当然のこととして扱われ、そしてそれが何故か読者を納得させてしまう性質がある。
 淡々とした伏線の作り方、伏線の無視の仕方、それが作品に奇妙な空気を作り出し、また世界観の設定と、虚無感のある絵柄とマッチして、不思議な魅力を作り出している。

*1:単に僕がよく読むものを挙げているだけ